今週、運慶の作品とみられる木造大日如来像がニューヨークのクリスティーズで競売に掛けられ、三越が1280万ドル (約12億7000万円。手数料込みの値段は約14億3700万円) で落札した事が大きなニュースになりました。国宝級の美術品がオークションに出品されるのは珍しく、海外の美術館や個人収集家・投資家などが強い興味を持ったようです。
もちろん僕もこの競売を知ったときは胸が高鳴りましたが、ニューヨークは遠かった。せめてヤフオクに出品してくれれば入札のチャンスがあったのになぁ、残念。
今回のブツは東京国立博物館などの調査で足利市樺崎町の樺崎寺 (廃寺) の本尊だった大日如来像とみられています。樺崎寺は明治初期の神仏分離令によって廃寺となり、今回オークションに流出したこの像はその頃に何らかの事情で散逸したもののようです。
この大日如来像が運慶の作品であると見られる理由としては
・像内に五輪塔形の木札、水晶珠、仏舎利容器と見られる水晶製の五輪塔が納められている
・木札の形状など、運慶独特の像内納入品と共通点が多い
・足利氏の氏寺「鑁阿寺」に伝来する『鑁阿寺文書』にある「鑁阿寺樺崎縁起並仏事次第」に記述のある「三尺皆金色金剛界大日如来像」と、大きさが一致
・足利義兼が作らせた足利市・光得寺の運慶作品の作風に極めて近い (下の写真参照)
などが挙げられています。(この大日如来像が発見された4年前の事は、東京国立博物館教育普及室長だった山本勉さんが書かれた文章を読んで下さい)
で、本題。
左:オークションに流出した大日如来像
右:光得寺の大日如来坐像 (重文指定)
画像では大きさを合わせたけど実際の像高は66.1cmと31.3cmで倍以上の差があり。でも細部までそっくりで、双子のように似ています。(ちなみにマナカナの見分け方は、左目の下にほくろがある方が佳奈。「ほくろカナ」と覚えよう)
600〜700年のあいだ、樺崎寺で暮らしていたふたりが明治政府の神仏分離令によって一方は光得寺へ、もう一方は行方不明。そして4年前、ふたり揃って東京国立博物館で展示。約130年ぶり、束の間の再会でした。次にふたりが出会うのはいつになるのか…。
今回は三越に落札を依頼した人物が日本人ということで、海外流出の事態はひとまず回避されたようだが (とはいってもその人物の詳細は不明のため、今後どうなるかは分からない) 、讀賣新聞の夕刊によると明治以降、海外へ流出した主な鎌倉彫刻は以下の6件あるという。
木造弥勒菩薩立像 (快慶) →ボストン美術館 (米)
木造釈迦如来立像 (快慶) →キンベル美術館 (米)
木造地蔵菩薩立像 (快慶) →バーク・コレクション (米)
銅造菩薩立像 (康勝) →ギメ美術館 (仏)
木造地蔵菩薩立像 (康円) →ケルン東洋美術館 (独)
木造地蔵菩薩立像 (善円) →アジア・ソサエティー (米)
康勝は運慶の子で、康円は孫。つまり慶派の人気がすごい。
ボストン美術館の仏教美術コレクションはかなり気合いが入っているので、一度この目で見てみたいです。バーク・コレクションは去年ニッポン・ツアーを敢行し、ウチの近所にも来てました。
とにかく今回の大日如来像も、願わくば「あるべき場所」に落ち着いて欲しいものです。